5ozコーヒーの話
ホタルカフェを始めた2011年から、eatos Baked Sweetsとして営業を続けている今に至るまで、お店で提供しているコーヒーは全てエスプレッソベースのメニューです。
エスプレッソベースのコーヒーは珍しくもなければ流行りでもないし、全国どこでも当たり前のようにカフェラテを飲める世の中ですが、ここであらためてeatosのコーヒーメニューについて少し話したいと思います。
eatosのコーヒーメニューの中で最も馴染みの薄いものと言えば、2020年から提供を始めた5oz(ファイブオンス)コーヒーだと思います。5ozコーヒーというのは、5oz(約140〜150ml)用のショットグラスを使うという理由で便宜上ぼくたちが勝手につけた名称。だから馴染みがないのは当たり前なのです。
ただ5ozのグラスを使っているのには実は理由があります。
eatosではエスプレッソのシングルショットを30〜35mlでお作りしています。そしてエスプレッソ:ミルクの割合を1:3くらいで提供するのに最適なサイズが5ozです。
なぜ1:3の割合にこだわるかと言うと、その割合で作られる、あるコーヒーに深い思い入れがあるからなのです。
20年近く前の話ですが、ぼくたちがヨーロッパを旅行したとき、旅の最初に訪れたのが大西洋岸の小さな国、ポルトガル。
西側のヨーロッパの中では比較的安く滞在でき、人々も優しくて食べ物も口に合うからか、いくつかの街を渡り歩きながら1ヶ月ほど滞在していました。
ポルトガルにはエスプレッソとミルクやお湯の割合によってたくさんのコーヒーメニューがありますが、その中でもぼくたちが好んで飲んでいたのが「ガラオン(Galão)」というコーヒーです。
細長いグラスいっぱいに注がれたエスプレッソとスチームミルク。熱いグラスを指先で掴んで濃いめのミルクコーヒーを飲みながら、パステル・デ・ナタ(カスタード入りのサクサクのタルト)などのお菓子をいただく至福のとき。
素朴な焼菓子と一緒に飲むにも、ただコーヒーだけをキュッと立ち飲みするにもちょうど良い味のバランスと分量で、滞在中は毎日のようにどこかしらのカフェで飲んでいた思い出の味です。
そして、そのガラオンこそが、エスプレッソ1:ミルク3の割合で提供されるコーヒーなのです。
エスプレッソベースのコーヒーは、エスプレッソそのものの味わいの違いによって、ミルクと合わせたときの味も全然違うから、eatosの5ozコーヒーはポルトガルで飲んでいたガラオンの味をそのまま再現したものではないけれど、自分たちが美味しいと思うエスプレッソで作った、eatosなりのガラオンです。
5ozコーヒーは、ガラオンへの思いを込めた「ベーシック」をベースに、「ショコラ」と「メープルシナモン」というバリエーションもご用意しています。
ショコラはクーベルチュールチョコレートを入れてスチームしたミルクをエスプレッソに注いだもの。メープルシナモンはスチームミルクにメープルシロップを溶かして仕上げにシナモンをトッピングしたものです。
長閑な田んぼの景色を眺めながら、遠くユーラシア大陸最西端にある小さな国に思いを馳せて、いつもより少しだけ濃いめのミルクコーヒーを楽しんでみてくださいね。